「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【新東京書簡】第四十八信『やっぱり大豊作の95年組』海江田(18.10.31)

新東京書簡

第四十八信 やっぱり大豊作の95年組

■クラブ史上まれに見る大豊作の世代

後藤さん、こないださ、うれしいことがあったよ。

ちょっくら煙草でも吸ってくるかとクラブハウスを出たら、玄関の外にいたスーツ姿の青年に名前を呼ばれた。

誰だ。どっかで会ったような気がするけれど、思い出せなかった。もともと人の顔を記憶するのが不得意なうえ、加齢による機能低下が著しい。とりあえず、話を合わせて時間を稼ごうかとしたところ、相手が察しよく名乗ってくれた。

「こんにちは、山口です!」

なんだ、東京ヴェルディユース95年組の山口陽一朗かい。こっちは顔よりも全体のシルエットで憶えているから、スーツ姿だと全然わからなかった。以前はふにゃっとした印象だったが、ずいぶんとシャッキリしている。

95年組はクラブ史上まれに見る大豊作の世代だ。高木大輔(レノファ山口FC)、菅嶋弘希、澤井直人(ACアジャクシオ)、安西幸輝(鹿島アントラーズ)、畠中槙之輔(横浜F・マリノス)の5名がトップに昇格し、長谷川洸が日体大を経て今季加入。ジュニアユースから流通経済大柏高に進んだ青木亮太(名古屋グランパス)もこの世代である。

ジュニア時代、全日本少年サッカー大会、ダノンネーションズカップ、チビリンピック、バーモントカップの4大タイトルを総なめにし、以降も順調に育っていった点で特異性の高さが際立つ。当時のジュニアを率いていたのは永田雅人監督。ご存知、日テレ・ベレーザの監督就任1年目から2冠を達成し、目覚ましい成果を挙げている指導者だ。彼らを早枯れの才能に終わらせなかった背景がきっとあるのだろう。

青赤ユースウォッチャーの人たちにはなじみが薄いか。その頃はカテゴリーが入れ違っていたから対戦の機会はほぼなかった。

山口は中央大に進み、卒業後のプロ入りが期待されたひとりだった。ボールの動かし方がめっぽう巧く、ゲームをつくれるボランチ。ボールを受けるときの角度のつくり方、放すタイミングといった繊細な技術で勝負する選手だった。その山口を、ユースを率いていた冨樫剛一監督は全幅の信頼を置いて使っていた。

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